外注先の著作権侵害について外注元(発注者)が責任を負うとされた裁判例「パンダイラスト事件」をご紹介いたします。
経過:平成25年、原告はイラストレーターとして制作したパンダのイラスト(原告イラスト)を表示した手ぬぐいの写真をブログに掲載していました( 原告イラストの著作権及び著作者人格権を有する)。
平成29年11月頃から平成30年9月頃まで、被告は、被告イラストを付した被告商品を製造・販売していました。被告商品は、被告商品の製造委託先から包装箱の企画、制作等の委託を受けた外注の業者である補助参加人が提案し、採用されたものです。平成30年に原告が被告を相手取り著作権侵害訴訟を提起しました。
被告は、外注業者の制作するデザインについてすべてを管理することは事実上困難と主張しましたが、裁判所は、次のように被告の過失を認定しました。
判事事項:
「・・・・被告らは、いずれも加工食品の製造及び販売等を業とする株式会社であり、業として、被告商品を販売していたのであるから、その製造を第三者に委託していたとしても、補助参加人等に対して被告イラストの作成経過を確認するなどして他人のイラストに依拠していないかを確認すべき注意義務を負っていたと認めるのが相当である。
また、前記認定のとおり、本件イラストと被告イラストの同一性の程度が非常に高いものであったことからしても、被告らが上記のような確認をしていれば、著作権及び著作者人格権の侵害を回避することは十分に可能であったと考えられる。
にもかかわらず、被告らは、上記のような確認を怠ったものであるから、上記の注意 義務違反が認められる。
したがって、被告らに著作権(複製権、譲渡権)侵害及び著作者人格権(氏 名表示権、同一性保持権)侵害について過失が認められる。」
→ 外部の業者に委託していたとしても著作権侵害責任を免れることにはならないので、イラスト等の作成経緯を確認することが重要です。また委託に際しては、知的財産権を侵害してしまった場合の責任の所在を契約で事前にしっかり決めておくようにしたいものです。
この記事内の画像および判決文は 東京地判平成31・3・13(平成30年(ワ)第27253号) 著作権侵害差止等請求事件より引用